【比較】任意売却と競売の違い!|流れや注意点を解説

【比較】任意売却と競売の違い!|流れや注意点を解説

住宅ローン等の借入金の返済が困難になってしまった場合や税金等の滞納により、不動産の売却をせざる得ない状況に陥ってしまった場合、その債務の弁済のために行う不動産の売却方法として「任意売却」や「競売」という言葉を耳にされた事はあるのではないでしょうか?

この記事では、任意売却と競売の違いや流れ、注意点などについて、詳しく解説します。債務の返済に悩んでいる方は、基礎的な知識を身につけて、適切な売却に繋げましょう。
実務上の不動産の取引の現場では任意売却や競売といっても、一つひとつのケースによって特徴が異なりますが、今回は任意売却と競売の”一般的な違い”として解説します。

任意売却と競売では、一般的には先ず任意売却を検討して、競売は最後の手段となります。任意売却の方が、競売よりもメリットが多いといえますが、任意売却は金融機関など債権者の同意が必要で、すぐには売れない難あり物件の場合には、やむを得ず競売になってしまうこともあります。

任意売却と競売の違い

任意売却と競売は、不動産の売却方法としては似ているように見えますが、実は大きな違いがあります。以下に、任意売却と競売の主な違いをまとめましたので、是非参考にしてください。

任意売却と競売の違いを見てみると、任意売却の方が、売却価格や引越しのタイミング、残債の対応、プライバシーの保護など、債務者にとって有利な点が多いことがわかります。しかし、任意売却には、債権者の同意が必要なため、必ずしも希望通りになるとは限りません。また、すぐには売れない難あり不動産などの場合にも、任意売却は難しくなります。

競売には債権者の申し立てが必要なため、返済の遅れがあっても、すぐに競売になるとは限りませんが、どちらの場合も、早めに任意売却の専門家に相談することが重要です。

項 目任意売却競 売
売却の主体債務者(所有者)債権者(裁判所)
売却の条件債権者の同意が必要債権者の申し立てが必要
売却価格市場価格に近い市場価格より安い(5~7割程度)
売却期間3~6ヶ月程度6ヶ月~1年程度
売却方法不動産会社や専門業者に依頼裁判所が主導
引越しのタイミング相談できる ※リースバックの相談も可競売の流れによって決定
残債の対応返済計画の交渉が可能返済計画の交渉は困難
プライバシーの保護高い低い

先ずは「任意売却」を試みて難しければ「競売」

任意売却と競売の違いを知ったうえで、どちらの売却方法を選ぶべきかというと、基本的には任意売却を検討して競売は最後の手段となります。なぜなら、任意売却には、以下のようなメリットがあるからです。

1)任意売却のメリット

①市場価格に近い価格で売却できる

任意売却は、債務者の意思で売却できるため、不動産会社や専門業者に依頼して、市場価格に近い価格で売ることができます。競売は、入札で売価を決めますが、結果的に市場価格の5~7割程度で売却されることが多くなります。少しでも高く売却できれば、借金を減らすことができ、その後の返済が楽になるでしょう。

②引越しのタイミングを相談できる

任意売却では、引越しのタイミングを相談でき、売却後もリースバックによって、同じ家に住み続けることも可能です。競売では、引越しのタイミングは、裁判所が指定する期日に従わなければなりません。引越しのタイミングを自分で決められれば、引越し準備や費用の確保など、計画的に行うことができます。

③残債の返済計画を立てやすい

任意売却は債権者との交渉によって残債の返済計画を立て、債務の一部免除や分割払いなどの優遇措置を受けることが可能です。競売では交渉は困難で、債権者は競売によって得た代金を優先的に回収することになります。残債の返済計画が立てられれば、生活の再建も可能になります。

④プライバシーが守られやすい

任意売却は公的な手続きではないため、売却の事実や内容が公開されることはなく、一般的な不動産売却と同様に、不動産会社や専門業者は個人情報を守る必要があります。一方で、競売は公的な手続きであるため、売却の事実や内容が公開されることになり、情報はインターネットや新聞などで広く公告されることになります。プライバシーが守られれば、周囲の目や噂などの心配を減らすことができるでしょう。

2)任意売却ができない場合は競売に移行

以上のように、任意売却は、競売に比べて、債務者にとって有利な点が多くなります。しかし、任意売却には、債権者の同意が必要なため、必ずしも実現できるとは限りません。債権者が任意売却に応じない場合や、任意売却の条件に合意できない場合は、競売になってしまうこともあります。

競売になると、債務者は、多くのデメリットを受けることになります。そのようなデメリットを受けないためにも、不動産売却の基礎知識を把握したうえで、早めに適切な専門家に相談することが重要です。

任意売却の注意点

競売にくらべてメリットの多い任意売却ですが、注意点もありますのでしっかりと把握しておきましょう。特に、任意売却を依頼する不動産会社選びは、重要なポイントになります。

1)債権者の同意が必要

任意売却は、債権者の同意が必要なため、債権者との交渉が重要です。債権者は任意売却に応じるかどうかを自由に判断することができ、債権者が任意売却に応じない場合や、任意売却の条件に合意できない場合は、競売になってしまうこともあります。債権者との交渉は、専門的な知識などが必要なため、不動産会社や専門業者に依頼することがおすすめです。

2)不動産会社や専門業者の選び方に注意

任意売却は、専門性を持った不動産業者に依頼するのが一般的です。任意売却は一般的な不動産売買とは異なり、専門性が不可欠となります。
任意売却における適切な査定やスケジューリング、債権者の合意形成を行うための調整、場合によっては破産手続きの準備等、一般的な売買とは異なる動きや思考が必要となります。不動産会社は多くあるものの任意売却を専門とする不動産会社の数は実はあまり多くありません。
また、注意が必要なのは、この専門性を逆手に取った悪質な業者も存在する事です。「不当な手数料や費用を請求される」「不利な売却条件を押し付けられる」「詐欺や横領に遭う」などのようなトラブルに巻き込まれる可能性がありますので注意が必要です。弁済に詰まり急ぐ必要があったとしても、依頼する不動産業者選びは慎重に行いましょう。

3)任意売却が成立しないケースもある

任意売却は、特定の期日を設定して行うケースが一般的です。期間の制約があるがために、期間内に買い手がつかない場合もありますので、そのことを念頭に置いて、価格設定やスケジュールを計画しましょう。「築年数が古い」「不人気エリア」「全債権者の合意が得られない」「売却活動できる期間が限られている」などの理由で売れないことも十分に考えられます。また、物件に問題がなくても、タイミングが悪く売れないこともありえます。

競売の注意点

不動産の競売とは、債務者が支払いを滞納した場合に、債権者が裁判所に申し立てて、債務者が所有する不動産を強制的に売却する手続きのことです。競売にかかる不動産は、住宅やマンション、土地など様々ですが、競売になると、債務者にとっては以下のようなデメリットがあります。

1)低価格で売却される

競売では、不動産の市場価格よりも低い価格で売却される可能性が高くなります。これは競売にかかる不動産は、一般的には状態が悪かったり、立地が不利だったりするため、買い手が少なく競争性が低いからです。また、競売では、不動産の詳細な情報が公開されないことも多く、買い手はリスクを負うことになるため、安全マージンをとって低い価格で入札する傾向があります。このように競売では、不動産の価値が下がり、借金が残ってしまい、結果的に自己破産に結びつくケースも多くなります。

2)プライバシーが害される(公告される)

競売では、不動産の所有者や住所、競売の理由や期日などの情報が、新聞や裁判所のBIT(不動産競売物件情報サイト)などで公開されます。これは、競売の透明性や公平性を確保するための措置ですが、債務者にとっては、プライバシーが害されることになります。公開された情報は、誰でも閲覧できるため、債務者の個人情報が流出したり、周囲の人からの評判や信用が下がったりする恐れがあるでしょう。また、競売にかかる不動産には、債務者の家族や親族が住んでいる場合もありますが、同様にプライバシーの侵害を受けることになります。

3)引渡命令による強制的な引越しが必要

競売では、不動産の落札者が決まった後、裁判所から債務者に対して、不動産の引き渡しを命じる文書が送付されます。これを引渡命令といいますが、債務者はこの命令に従って、不動産から退去しなければなりません。引渡命令には、退去の期限が設定されていますが、通常は1~2ヶ月程度です。この期間内に、債務者は新しい住まいを探したり、荷物を整理したり、引越し業者を手配したりしなければなりません。

しかし、債務者は経済的に困窮していたり、精神的に不安定だったりすることが多く、引越しに必要な費用や時間を確保することが困難です。そのため、引渡命令に従えない場合もありますが、その場合は、裁判所の執行官によって、強制的に不動産から排除されることになります。このように、競売では、債務者は自分の住まいを失い、生活の安定を崩されることになります。

不動産の売却手続きの流れ

任意売却と競売では、手続きの流れは全く異なります。基本的には、任意売却で進められるようにすると良いですが、状況によっては競売となってしまうこともあります。どちらにしても、手続きの流れはしっかりと把握して、少しでも不利益を回避できるようにしましょう。

1)任意売却の流れ

任意売却の手続きの基本的な流れは、以下のとおりです。専門家に相談して、債権者との話し合いがスムーズに行えるようにすることがポイントです。

①督促状が届いたら、任意売却が得意な不動産業者・専門家に相談する。

②物件の査定をして、債権者との交渉を行う。

③債権者から任意売却の許可が得られれば、買主の募集を行う。

④売買契約が成立したら、債権者に支払いを行い、残債務の返済方法を決める。

⑤物件の引き渡し(引越し)を行う。リースバック(同じ物件に住み続けたい場合)を希望する場合には、早めの相談が必要です。

2)競売の流れ

競売の手続きの基本的な流れは、以下のとおりです。競売の流れは、細かく決まっていますので、しっかりと把握して、今後の生活再建を見据えて行動しましょう。自分だけで、今後の対策を決めるのは困難になりますので、専門家や行政機関への相談を検討しましょう。

①ローンの滞納が続くと、債権者から一括返済を求められる。
※本来は滞納する前に専門家へ相談することがおすすめです。滞納してしまった場合には、一刻も早く専門家に相談した方が、有利な対策が可能になります。

②一括返済ができなければ、債権者が裁判所に競売の申し立てをする。

③裁判所から「競売開始決定通知」が届く。

④裁判所から派遣された執行官と評価人が物件の現況調査を行う。

⑤裁判所が売却基準価額などを決定し「期間入札通知」が届く。

⑥新聞やBIT(不動産競売物件情報サイト)などで公開(公告)

⑦入札期間中に入札者が入札書を提出する。

⑧開札日に最高価買受申出人(最高入札者)が決まる。

⑨裁判所が売却許可決定をする。

⑩落札者が代金を納付し所有権が移転する(代金納付)。

⑪裁判所から引渡命令が出され物件を明け渡す。

参考:裁判所「不動産競売手続について」 裁判所「BIT不動産競売物件情報サイト」

いかがでしたでしょうか?
任意売却の事なら、任意売却専門企業である「株式会社FPコネクト」へお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

水野 将成

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大学卒業後、大手総合建設会社(東証プライム上場)の経営企画セクションで約10年間、業種の異なるグループ会社10社を含む、数多くの経営企画、新規事業の立上げやM&Aに従事。自ら新規立案した事業の全てに当事者として、寝る間を惜しみ地を這うような実務(PDR:Prep(準備)=Do(実行)=Review(評価))を実行。確実な落とし込みまでを行なう。 その後、財閥系大手不動産会社のホールセールセクションで約9年に渡り不動産コンサルティング業務に従事。新設部署の立上げ期であったため、既存顧客はゼロに等しく、顧客のほぼ全てを自ら新規開拓。主に法人のCRE戦略を対象とした本支店・店舗・工場の移転統廃合支援、売買(所有権・借地権)、事業用定期借地、調整区域開発、法的整理(清算・破産)に基づく不動産処分等、幅広い不動産企画を提案し実行。 これらを経て「株式会社FPコネクト」を設立。M&A実務支援・任意売却・不動産企画を専門に事業展開中。

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